【2026年最新】電気管理技術者に必要な実務経験は最短1年に。3つの改正と、いまのルールを整理
電験三種に合格したのに、独立どころか担当すら持てない。
ついこの間まで、それが当たり前でした。電気管理技術者として外部委託の仕事を受けるには、第三種で5年の実務経験が必要です。しかもその5年は、保安協会のような保安法人に就職しないと、ほぼ積めませんでした。
この壁が、2024年に立て続けに下がりました。私はYouTube「電気保安の学校」でもその都度お伝えしてきましたが、その後もさらに制度が変わっています。
この記事では、2026年10月時点の最新ルールを、経済産業省の公表資料をもとに一つずつ整理します。
結論:必要な実務経験は、最短1年まで短くなった
まず、いまのルールを表にまとめます。外部委託の仕事を受けるとき(電気管理技術者・保安業務従事者として働くとき)に必要な実務経験の年数です。
| 免状と講習・訓練 | 通常 | 小規模設備のみ受託する場合 |
|---|---|---|
| 第三種のみ | 5年 | 4年 |
| 第二種のみ | 4年 | 3年 |
| 第一種のみ | 3年 | 2年 |
| 第二種・第三種 + 保安管理業務講習 | 3年 | 2年 |
| 第二種・第三種 + 講習 + 保安管理業務訓練 | 2年 | 1年 |
| 第一種 + 保安管理業務訓練 | 2年 | 1年 |
「小規模設備」とは、次の3つの条件をすべて満たす需要設備のことです。
- 設備容量が300kVA以下
- 受電設備がキュービクル式
- 主遮断装置が高圧限流ヒューズと高圧交流負荷開閉器の組み合わせ(いわゆるPF・S形)
講習や訓練は、免状の交付を受けた後に修了したものが対象です。
つまり、第三種の方でも、講習と訓練を修了し、小規模設備に絞れば、最短1年の実務経験で外部委託の仕事を受けられるようになっています。
2024年から続いた3つの改正
ここまで短くなったのは、2024年に3つの改正が重なったからです。順番に見ていきます。
① 2024年4月:数え方が「21日」から「21件」に
一番大きかったのが、実務経験の数え方の変更です。
以前は、月に21日働いて、ようやく1か月分の実務経験でした。1日に5件の現場を回っても、1日は1日です。会社に勤めながら実務経験を積むことは、事実上できませんでした。
2024年4月1日から、電気管理技術者や保安業務従事者の補助者として点検した場合は、設備21件の点検で1か月分と数えるようになりました。
- 1日に5件回れば、5日間で25件。それで1か月分になります
- 1か月に21件を超えても、1か月分は1か月分です(翌月には繰り越せません)
- 21件に届かない月は、同じように届かなかった他の月と合わせて数えられます
たとえば、平日は会社員として働き、休みの日に独立した電気管理技術者の点検に同行する。そういう積み方が、制度として認められるようになりました。
選任された電気主任技術者として働いた場合は、これまでどおり選任されていた期間で数えます。電気工事の仕事は、21日の従事で1か月分です。
② 2024年6月:講習と小規模設備の組み合わせで「2年」
2024年6月1日の改正で、保安管理業務講習と小規模設備の1年短縮を組み合わせられるようになりました。
保安管理業務講習を修了すると、免状の種類に関わらず必要な年数は3年になります。これまでは、ここに小規模設備の「1年短縮」を重ねることができませんでした。改正後は、講習を修了した方が小規模設備だけを受託する場合、2年で外部委託の仕事を受けられます。
③ 2024年11月:保安管理業務訓練で「2年」、小規模設備なら「1年」
さらに2024年11月15日から、保安管理業務訓練という新しい制度が始まりました。
第二種・第三種の方は講習と訓練の両方を、第一種の方は訓練を修了すると、必要な年数が2年になります。小規模設備だけを受託する場合は、そこからさらに1年短くなり、1年です。
この③は、私がYouTubeで改正をお伝えした後に始まった制度です。動画をご覧になった方も、ぜひ最新のルールとしてこちらを押さえておいてください。
「300kVA以下だけで食べていけるの?」への答え
小規模設備に限った短縮と聞くと、「そんな小さいお客さんだけで仕事になるのか」と心配になる方もいると思います。
私自身のデータでお答えします。
- 私がいま受け持っているお客様のうち、約7割が300kVA以下です
- 保安協会に20年勤めていた頃(岐阜県)は、担当していたお客様の約9割が300kVA以下でした
外部委託のお客様は、もともと小規模な設備がほとんどです。最初の1〜2年を小規模設備でしっかり経験し、必要な年数に達してから大きな設備も持つ。それで十分に仕事は成り立ちます。
もう一つ、大事なことがあります。小規模設備の短縮を使って自分で受託して点検した期間も、実務経験として数えられます。この場合も21件で1か月分です。自分のお客様を点検しながら、別の電気管理技術者の補助にも入る。その2つを合わせて21件にすることもできます。
免状を取る前の経験も、半分は数えられる
見落としがちですが、免状の交付を受ける前の実務経験も、その半分の期間を数えられます。
経済産業省の監督部が示している例を紹介します。
- 実務経験5年で第三種の免状を取った方は、そのうち半分の2.5年を充当できます
- そのうえで保安管理業務講習を修了すれば、必要な年数は3年なので、免状の交付後に必要なのは**残り0.5年(6か月)**です
電気工事や設備管理の仕事をしてきた方は、思っているより早く要件を満たせるかもしれません。
年数が短くなったからこそ、気をつけたいこと
ここまで「短くなった」話をしてきましたが、高圧の電気を扱う責任の重さは何も変わっていません。事故が起きれば、問われるのはあなた自身です。
それでも私は、年数の短縮を前向きに捉えています。
5年の実務経験を「なんとなく」積んだ人と、2年で一人前になると決めて「集中して」積んだ人。独立して成功するのは、間違いなく後者です。電験三種という難関を突破したときと同じで、大事なのは期間の長さではなく、目的を持って取り組むかどうかです。
短くなった期間をどう使うか。講習で体系的に学び、現場で一件一件を自分の担当のつもりで点検する。その積み重ねが、独立してからの自信になります。
手続きは、所轄の産業保安監督部へ
実務経験の確認は、事業場を管轄する産業保安監督部に書類を出して受けます。主な提出書類は次のとおりです。
- 電気主任技術者免状の写し
- 実務経歴証明書
- 補助者として従事した場合は、点検した事業場と件数の一覧
- 講習や訓練を修了した場合は、その修了証の写し
書類仕事が苦手という方も多いのですが、心配はいりません。免状の申請と似た手続きですし、監督部のホームページに様式や記載例が載っています。私の経験では、問い合わせにもとても丁寧に答えてくださいます。
制度は、いまも見直しが続いている
電気保安の制度は、電気主任技術者の不足を背景に、毎年のように見直されています。2025年4月には、一定の条件を満たす設備で、外部委託の月次点検を「3か月に1回」にできる改正も行われました。
この記事は2026年10月時点の情報です。実際に申請するときは、必ず所轄の産業保安監督部で最新の要件を確認してください。
動画でも詳しく解説しています
改正の背景や、私が現場で感じていることは、YouTube「電気保安の学校」でもお話ししています。
あわせて読みたい
- 保安管理業務講習とは?制度の仕組みと、受けるとできること
- 電験三種に受かっただけでは足りない?実務経験を短縮する「認定」の仕組み
- 合格した瞬間から始まる「本当の責任」。電気主任技術者は何を任され、何を問われるのか
参考にした公的資料
- 経済産業省「外部委託の受託に必要な実務経験期間の確認について」(実務に従事した期間の確認に係る運用、2024年4月1日施行・2024年11月15日改正)
- 経済産業省「主任技術者制度に関するQ&A」(令和8年10月版)
- 中部近畿産業保安監督部近畿支部「保安管理業務に従事したい方」(2026年1月30日更新)
実務経験の壁は、確実に下がっています。電験三種を取った意味は、これからもっと大きくなるはずです。
株式会社電気保安HIKARI 代表 江嵜祐二
この記事を書いた人:電気保安HIKARI




